一歩

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その言葉を聞いた禅は、乱暴に紙をポケットに突っ込んだ。 それを見たマコトは、床に正座して、禅に向かって土下座した。 「……許してくれとは言わない。 そんなことを言う権利、俺にはないから。 でも……本当にすまなかった」 禅はそんなマコトを一瞥すると、声をかけることなく部屋を出て行った。 「……何も言わなくてよかったの?」 沙希がそう尋ねると、禅は目を閉じて言った。 「……何を言ったらいいのか分からなかった。 今でも恨んでるし、許せない。 ……でも、あんなマコトを見てたら、あいつも被害者に感じてきたんだ」 その言葉に、翔は大きなため息をついた。 「まぁ、あの人も同情するところが全くないわけじゃないからな。 それで、茜って人には会ってくのか?」
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