独歩

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茜と話してから1週間がたった。 あれから、特に何かが変わったわけではない。 禅の人間不信も治る様子もいない。 しかし、禅には過去と決別し、一歩踏み出したという実感があった。 今も沙希や翔と話していているが、以前よりもう少しだけ笑うことが増えた。 「……屋上に行ってくるかな」 禅がそう呟くと、翔がタバコを吸う仕草をして尋ねてきた。 禅がそれに頷くと、沙希が手をヒラヒラさせて言った。 「遅れても授業に出なよ」 その言葉に頷くと、禅は1人廊下に出た。 すると、佐奈が俯いている女子生徒と、困ったような表情で話し込んでいた。 禅はそれを横目に見ながら、2人の横を通り抜けようとしたが、俯いていた女子生徒が、禅に気付いて声を上げた。
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