独歩

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その言葉に、禅は腰を下ろして、フェンスに背中を預けて言った。 「俺は常習犯だからいいんだよ」 すると、佐奈はクスッと笑って禅の隣に腰を下ろして言った。 「ねぇ禅くん、ピアノのこと、ありがとうね。 でも、なんで引き受けてくれたの?」 その問いに、禅はタバコを大きく吐き出して答えた。 「……別に。ただの気まぐれだ」 すると、佐奈は首を振って言った。 「きっと違うよ。 先週休んだ後から、禅くんの空気が変わったもん」 その言葉に、禅はキョトンとして尋ねた。 「……変わったか?」 その問いに、佐奈は大きく頷いて言った。 「なんとなくだけど、柔らかくなったかな。 前の禅くんなら、今みたいに隙のある顔しなかったし」
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