独歩

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その言葉に、禅は首を振って言った。 「知らないんだからしかたない。 そう思うことにした。 だから、気にしなくていい」 そんな禅の言葉に、佐奈は安心したような笑顔を浮かべた。 「禅くん、やっぱり変わってきてるよ」 「……そうか」 禅が目を閉じてそう言うと、ちょうど料理が運ばれてきた。 その後は次のライヴはいつかとか、必ず見に行くとか、後はあの曲が好きといった話をしてファミレスを出た。 「じゃあ、俺はこっちだから」 禅がそう言って2人に背を向けると、佐奈が禅に声をかけてきた。 「禅くん、また明日ね!」 「……あぁ、また明日」 そう言って、禅は一歩踏み出した。 沙希に言われるでもなく、 翔が隣にいるわけでもない。 禅は誰に頼るでもなく、 自分自身の意思で、 たった1人で歩き出していた。
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