後輩

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すると、裕紀は首を振った。 「そうじゃないです。 たしかに怖かったですけど、それよりも神谷先輩の目が気になって話しかけられなかったんです。 すごく、遠いものを見てるような目をしてましたから」 遠いもの。 たしかに見ていた。 自分の過去という、目に見えないものをずっと。 特に、屋上でタバコを吸っている時は。 「……よく見てたんだな」 禅が自嘲気味に笑ってそう言うと、裕紀は目を閉じて言った。 「何を見ていたかは分かりませんでしたけどね。 でも、今はなんとなく分かります。 神谷先輩、転校してくる前のこと話してくれませんから」 裕紀の言葉に、禅は苦笑してしまった。 「お前、凄いな」
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