後輩

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裕紀の問いに、禅は一瞬躊躇した後、目をきつく閉じ、歯を食いしばって頷いた。 「俺は……仲間の彼女から告白されて……断った……。 でも……不幸が重なって……俺がその女を押し倒したって……そう勘違いされた……」 禅の言葉に、裕紀は息を呑んだ。 しかし、禅はさらに続ける。 「それで、俺は仲間からリンチを受けた……。 それから、俺の周りには誰もいなくなった。 親、仲間、友達、みんな俺を信じてくれなかった。 結局、信じてくれたのは兄貴と義姉さん、そして義姉さんのバンドメンバーだけだった。 だから、俺は人間嫌いになった。 誰も信じない。 誰も信じられない。 誰も信じたくない。 今はだいぶマシにはなったけど、誰かと付き合う勇気はない……」 そう言うと、禅は息を震わせながら、大きく息を吐き出して目を開いた。
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