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すると、裕紀は目を潤ませながら禅を見つめていた。
「ごめんなさい……。
わたし、そんなことがあったなんて知らなくって……。
神谷先輩、辛いのに、もっと苦しめるようなこと言っちゃって……」
そう言って、裕紀は両手で顔をおおって涙を流した。
そんな裕紀に、禅は一歩踏み出すことも、その場から逃げ出すことも出来ず、申し訳なさそうに目を閉じていった。
「……お前が、俺のことをよく見てくれてたのは分かった。
嬉しいとさえ思った。
でも、今の俺は普通じゃないから、その気持ちに応えることは出来ない……」
すると、裕紀は涙を拭って禅を見上げた。
「……ありがとうございました。
誤魔化さないで、ちゃんと返事をしてくれて。
辛い過去まで話してくれて、神谷先輩の考えが分かったから、納得出来ました」
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