後輩

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「……スマン」 禅がもう一度謝ると、裕紀は無理に笑顔を作った。 「謝らないでください。 ……あの、わたし今日はもう帰りますね。 さすがに、ここにはいられないですから」 そう言って、裕紀は建物の中に走って入っていった。 その背中を見つめ、禅はその場でくたりと座り込んでしまった。 そして、手に持ったままになっていたタバコに気付いた。 タバコはすでに全てが灰にかわり、フィルターを焦がす嫌な臭いがする。 それに気付き、禅は大きなため息をついた。 「気付かないくらい緊張してたのか……」 そう呟き、先ほどの告白を思い出す。 裕紀は声をかけたことがなくとも、禅をずっと見ていた。 それも、詳しいことこそ分からずとも、驚くほど禅のことを見抜いていた。
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