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「……転校してあいつの隣に座った時からか」
禅は大きなため息をついた。
隣に座った時から沙希は禅にからんできた。
沙希が路上で歌っていた時も、
禅が音楽室で歌っていた時も、
元をただせば最初の瞬間がきっかけになっていた。
「……なんなんだよ、あの女は」
かまわないでほしい。
放っておいてほしい。
難しいことではないはずなのに、それでも沙希は禅を呼ぶ。
禅はタバコに火をつけて天井を見上げた。
「……もう、どうでもいいんだよ。……何もかも」
その呟きは誰にも届くことはないことはわかっている。
それでも口に出さずにはいられなかった。
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