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「わかったならとにかく練習しろ」
禅はそう言って沙希にギターを返して立ち上がった。
「あのさ、禅……!」
沙希は帰ろうとしている禅を呼び止めた。
禅は歩きだそうとしていたのをやめて沙希を見た。
「……ごめん、なんでもない!おやすみ!」
沙希はエヘヘと笑ってそう言って手を振った。
「あぁ。じゃあな」
沙希は禅が見えなくなるまでその背中を目で追った。
そして見えなくなると片付け始めた。
そしてため息をついた。
そんな沙希を翔が心配そうに見ていた。
それに気付いて沙希はニッコリ笑った。
「大丈夫だよ。帰ろ♪」
そう言って沙希は歩き出した。
そして空を見上げて心の中で呟いた。
(……きっと断られるもんね)
夜空には雲はなかった。
しかし世界は街灯に照らされ、
その光に邪魔されて、
星は見えなかった。
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