片鱗

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禅は歯を食いしばり舌打ちをした。 「マサさん、結衣さん、また後で来ます」 「あっうん。道案内してくれてありがとう」 結衣がそう言うと、禅は不機嫌な顔のまま頷いて歩いていってしまった。 「……禅もまだ割り切れてねぇんだな」 禅の背中を見送りながら、マサがそう呟くと結衣が頷いた。 「……音楽、やめちゃったんだってさ」 「そうか……」 暗い表情をする2人に、翔がおずおずと尋ねた。 「あの……、2人はいったい?」 「あぁ、俺たちか? 俺たちは禅がこっちに来る前によくタイバンしたバンドで、色々と縁があって仲がいいんだ。 もう1人いんだけど、そいつはそこのライブハウスの中にいる」
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