Ⅱ・後ろの席

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「・・・唯?」 聞き慣れない名前だった。 一応クラスメイトの顔と名前は覚えてはいたけれど、顔が浮かんでこない。 「唯のこと知らない?」 「・・・ちょっと分からないな」 「朋樹君は会ったことないと思うよ?今年になってからまだ学校来てないもん。」 「あ~、そうだねぇ。唯、来てないね。」 僕はふと、新学期に入ってだいぶ経っているけど、僕の後ろの席が未だに空席なのを思い出した。 「唯ってもしかして?」 「ピンポーン!朋樹君の後ろの子。」 「その子ってちょっとみんなと違ってるんだぁ。」 「いっつも一人でさ、何回も仲間に誘ったんだけど断られ続けたの。」 「長い黒髪のストレートでさ、雰囲気すごく大人っぽくて。冷めてるっていうか、人と違う世界を見てるみたい。」 「・・・去年の終わりくらいから学校にも来なくなっちゃった。」 始業のチャイムが鳴り始め、彼女達は席に戻った。 僕は後方に静かに置かれたままの机に目をやった。 「・・・唯、か。」
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