Ⅰ・プロローグ

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「朋樹、支度は済んだ?」 階段をドタバタと上がりながら母が言った。 僕はドアの前に立って、ベッドや机が片付けられた殺風景な部屋を見渡した。 窓の外からは、父や業者の人が何やら合図を掛け合いながら作業を続けている声がする。 「うん。終わったよ」 廊下に立って部屋を覗いていた母に言う。 「それなら、お父さんたちを手伝ってあげてよ。」 母は言いながら階段を降りていった。 「うん。」 母に向かって返事をしたあと、僕は開いていた窓を閉めるため窓枠に手を掛けた。 ブワァ~ッッ 外から突風が吹き付ける。 僕は目をつむり、風を顔で受け止めた。 だんだんと温かくなって、長く感じた冬も終わりが近づいている。 もうじき桜も咲き始め、季節は春へと移っていくんだなぁ。 僕は窓を閉め部屋をあとにした。
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