Ⅰ・プロローグ

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父の仕事の都合で、他県に引っ越すことが決まったのは、3月のはじめだった。 僕は中学を転校しなければならなくなったけど、こんな田舎町にずっといるつもりはなかったし、すぐに賛成した。 親友と呼べるような仲のいい友達も、正直いなかったから。 この街に深い思い入れはなかった。 今まで何度か転校を繰り返していたから、もう慣れてしまっていたのかもしれない。 またすぐに転校する、そう考えると友達を作ることにも消極的になっていた。 それでも、転校の挨拶をクラスの前でしたときは、何だか熱いものがこみ上げてきた。 それは、クラスメイトと離れる寂しさからというよりは、仲間に囲まれてずっと生きていく彼らを羨ましく、そして僕自身の境遇を悔しく、感じたからかもしれない。 とにかく僕は、転校することになった。
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