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「…まぁ、とりあえずはええわ」
そう後ろに居た男が言うと、雪斗はようやく刃物と鋭い殺気から解放された。
振り向くと、先程殺気を放ったとは思えないような、明るそうな青年が居た。
「あ、あの…貴方は…?」
「わいは、お前の監視を任された山崎や。監察の山崎烝、よろしゅうな」
ニカッと歯を見せて笑うその様は、本当に別人のように見える。
「俺は、た…」
「言わんでも解ってるで。滝田雪斗やろ?記憶喪失で、弟探してるっちゅう」
「あ…はい」
丁寧に自己紹介をされたので雪斗も返そうとしたが、その言葉は山崎によって遮られた。
その独特な訛りのある言葉と、山崎の憎めない笑顔を見ているにも関わらず、途端に先程の恐怖が押し寄せてきて、雪斗は拳を強く握る。
「…そない怖がらんでもええっちゅうに。もう何もせんって」
ぽんぽん、と頭を軽く数回叩かれると落ち着きを取り戻し、ゆっくりと体の力を抜いた。
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