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「永倉さん」
「…あ?」
「貴方は、馬鹿ですか…」
呟くように、ぽつりと言葉が届く。
いきなり何を言い出すのかと思って、永倉は雪斗の顔を覗き込んだ。
「……泣いてんのか?」
「っ、泣いて…ません…」
雪斗は肩を震わせ、握られていた刀を落とす。
濡れた瞳を見れば、先程の冷たさは完全になくなっている事が窺える。
雪斗には、永倉の気持ちが解ってしまった。
何故、自分を突き放したのか。
何故、1人で戦おうとしたのか。
「馬鹿、かもなァ」
腕の痛みを気にする事なく、永倉は雪斗をあやすようにその震える体を抱きしめる。
「…大丈夫だ、生きてっから」
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