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「ここに、俺の弟が…」
とは言っても。
弟がいる、という事しか解らない。
名前も歳も、もちろん顔も…一切自分の頭の中には思い浮かばないのだ。
「…どなたですか?」
「え?」
聞こえたのは、少し自分より低めで優しげな声。
振り返ると、鮮やかな羽織りを着た青年が立っていた。
「あ、えーと…」
「…ここに、何の御用でしょうか」
マズい。
明らかに警戒している。
相手は間違いなく、隊士。
それは相手の手に掛けられた、刀を見れば一目瞭然だ。
「…俺は、弟を探してて。で、新撰組にいるらしくて」
「弟さん、ですか?」
雪斗は背が小さいため、多少視線が相手の方が上になっている事もあり、物凄い威圧感だった。
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