=疑惑=

6/6
前へ
/64ページ
次へ
「ん…」 「雪斗?」 小さく目の前の相手から声が聞こえれば、永倉は体を前のめりにさせて、顔を覗き込んだ。 「……さん、…」 「…え?」 なんて呟いたのか。 生憎耳には届かなかったが、雪斗が永倉の着物を握り締めるかのように掴んだので、不意に視線がそちらへと移動する。 掴まれた手には強い力が込められているようで、永倉が離そうと思っても離れなかった。 どうしたんだと思い、再度視線を雪斗の顔へと向けると、永倉は目を見開いた。 「……泣いてんのか…?」 閉じられた瞳から零れ落ち、布団へと流れていく涙を見て、永倉は胸が締め付けられる思いだった。
/64ページ

最初のコメントを投稿しよう!

219人が本棚に入れています
本棚に追加