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「ん…」
「雪斗?」
小さく目の前の相手から声が聞こえれば、永倉は体を前のめりにさせて、顔を覗き込んだ。
「……さん、…」
「…え?」
なんて呟いたのか。
生憎耳には届かなかったが、雪斗が永倉の着物を握り締めるかのように掴んだので、不意に視線がそちらへと移動する。
掴まれた手には強い力が込められているようで、永倉が離そうと思っても離れなかった。
どうしたんだと思い、再度視線を雪斗の顔へと向けると、永倉は目を見開いた。
「……泣いてんのか…?」
閉じられた瞳から零れ落ち、布団へと流れていく涙を見て、永倉は胸が締め付けられる思いだった。
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