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少しの間、沈黙が流れた。
先に動いたのは、羽織りを着た青年。
「…とりあえず、一緒に来て下さい。副長に会わせます」
刀から手を離してそう告げる青年だが、目は信じきってない…そんな気配が伺える。
だが、少しでも自分の記憶が戻るかもしれない。
弟にだって、会えるかもしれない。
嬉しくなって、つい青年に思いっきり頭を下げると、勢いよく頭を上げる。
「ありがとうございます!」
そういって笑う雪斗の顔を見た時、一瞬だが青年の表情が動いた気がした。
それを隠すかのように背を向けると、屯所へ足を踏み入れる。
「…着いてきて下さい。くれぐれも、変な真似はしないようにお願いします」
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