出会い

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「それ食べたら、水を汲んで来ておくれ」  おはようという表面的な挨拶も早々に、中年といって差し支えない年齢の女性がそう言う。  やや太めの体を灰色の服に包んで、くすんだ色のエプロンを付けている。ひっつめた髪には白髪が目立った。  女性が指で示した先、テーブルの上には、木皿に入ったスープとパンがある。  薄い湯気がか細く立ち上るそれは、用意されてから若干の時間が経ってしまっているようだった。   「今日の恵みに感謝します」    誰にも聞こえない小さな声で、そう呟いた。  このおまじないを唱えると、どんなものでも美味しく食べることができるのだ。  そしてリタは、豆と野菜を煮込んだスープを急いで食べ始めた。
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