4人が本棚に入れています
本棚に追加
「それ食べたら、水を汲んで来ておくれ」
おはようという表面的な挨拶も早々に、中年といって差し支えない年齢の女性がそう言う。
やや太めの体を灰色の服に包んで、くすんだ色のエプロンを付けている。ひっつめた髪には白髪が目立った。
女性が指で示した先、テーブルの上には、木皿に入ったスープとパンがある。
薄い湯気がか細く立ち上るそれは、用意されてから若干の時間が経ってしまっているようだった。
「今日の恵みに感謝します」
誰にも聞こえない小さな声で、そう呟いた。
このおまじないを唱えると、どんなものでも美味しく食べることができるのだ。
そしてリタは、豆と野菜を煮込んだスープを急いで食べ始めた。
最初のコメントを投稿しよう!