出会い

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 スプーンを握る小さな手が忙しなく動くのを、女性は洗い場から横目で見ていた。  小皺の刻まれた目元は恐ろしくも優しくもない、酷く無感情なものだった。   「そう急がなくてもいいんだよ」    リタはその言葉を無視した。彼女の言うままゆっくり食べていたら、どやされるに決まっている。  時間が経って冷えたパンは少し固かった。  色の悪い野菜と小粒の豆が申し訳程度に入った味の薄いスープでパンを押し込んで、コップの水を飲み干す。    時間をかけずに食べ終えたリタは空の皿を洗い場へ持っていく。隣で、女性が何かを炒めていた。  漂ってくる美味しそうな匂いに、つい今しがた食べ終えたばかりだというのに、リタは反応せずにはいられなかった。
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