出会い

5/6
前へ
/7ページ
次へ
 窓から外を伺うように爪先を立ててその手元を覗きこまなくても、リタにはそれが何であるかが分かる。  今朝畑から採ってきた新鮮な野菜と、家畜から絞ってきたばかりのミルク、焼き立ての香ばしいパン。  あともう少しすれば、この美味しそうな食事がテーブルに並ぶ。  だが、それらは絶対にリタの口には入らない。  そのことを痛いほど理解していても、リタの目は美味しそうな食事に奪われた。 「なにしてるんだい」  ぎろり、と睨まれて、リタは慌てて目線を外した。  同時に自分がとても物欲しそうな顔をしていたことに気付く。  彼女――リタの養い親は、それをなにより嫌うのだ。   「ごめんなさい。……水を汲みに行ってきます」 「寄り道するんじゃないよ」  はい、と、消えそうな声で返事をした。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加