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えーっと、そうそう、私が暮らしていたのは田舎だったんです。だから、こんな都会とは違って森も林もあるんです。私が体験したのはその林の中でのことなんです。
ある日私は家からどこかに歩いていたんです。蝉が鳴いていたから、たぶん夏かな。
えっと、私の家はちょっと町の中心から外れていまして。家からそこに向かう道は、左に畑、右に雑木林、みたいな感じで。結構寂しいんですよ。歩いてると。
まあ、とにかくそんな道を歩いていたんです。目的は、忘れました。ちなみにこれから話す内容も、細かい所はすっ飛んでますからね。記憶なんてそんなものですよ。大事な部分以外は、ヤスリを使ったみたいにどんどん薄れてく。
話が逸れ過ぎですね、すいません。こういう性分なんです。そう、道を歩いていると、歩き慣れた道なんですけどね。見たことの無い横道を見つけたんですよ。右の林の中に。獣道なんですけど、ちゃんと踏みならされた感があって。
ずっとその道を歩いてるはずなのに、初めてだったんです。
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