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夜の廃病院
ガガガッッ!ガガガッ!!
黒澤奈緒美と、オカルト研究部の部員達の目の前…ほんの数歩先で黒く粘り着くような「光」が、地面に描かれた魔法陣によって遮断され、まるで周囲の空間を歪ませるような音を立てていた。
『藪崎さん!魔法陣は保ちそうですか!?』
黒澤奈緒美が、床に座り込んで瞑目する男子部員に声をかける。
『なんとか…しかしそう長くは保ちそうにないですよ』
この危険な状況下でも、さして動揺もせず、棒読み口調で返事する「藪崎亮」…今の戦いが始まってから、自らが描いた魔法陣に霊力を通すべく座して瞑目し、自身の力が「陣」に流れてゆくイメージを用いて魔法陣へ霊力を流し込み、結界の効力を発揮させていた。
『うらっ!!』
反撃とばかりに、手に持つトランプを、器用に手裏剣のごとく投げ放つのは「山辺織」…聖別されたトランプの中から「剣」を意味する、スペードの5を引き抜き、魔法陣の「外」で自分達に襲いかかってくるものに投げつけたのだ。
シュ!
………パンッ!
手から投げ放たれたスペードの5の札は、その黒い肌に触れた瞬間に紙切れとなって散る。
『ダメか!くそっタコめ!』
罵倒と共に顔を歪ませる山辺…
『じょ…冗談じゃないよ!まさか調べに来た心霊スポットに居たのが、また「悪魔」だったなんて!!』
砕けて散らばった懐中電灯の破片を踏みながら、綾崎可奈が震えていた、魔法陣の外に居るもの…醜悪な両腕と、水死人のように白濁した目、腐って黒ずんだような皮膚を持つ、人間の姿を真似た「悪魔」を見て。
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