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「なんでだよっ!中学校ぐらい行ったことあるだろ」
「ううん。父はね、自分が早く引退したいからって、昔から私には家庭教師をつけていたの。ひたすら勉強の毎日で、普通の子が通っている小学校への登校姿を見ながら勉強してたわ。でも、」
そこで桃香は一旦口を噤む。
「私だって学校に通いたかった!始めはよかった。他の子もそうだと思ってたから。でも父の連れ添いで挨拶に回った富豪達の子から、自分だけだと知った!そうなるともうだめだった。何度頼んだかわからない。あの子達と同じ学校に行かせて、って。お金持ちの子ども専用の学校があるのも知っていたから。そこでもいいから行かせて、って。でも駄目だった。父にはその分の時間もお金もかけたくはなかったみたい。最低限の勉強と最低限の時間で、私を会社のトップにしたかったみたい」
桃香の瞳から絶え間なく涙が流れ出す。
それを止めることもなく、桃香は顔をくしゃくしゃにしながら叫ぶ。
「それでもしょうがなかった。何度も家出しようと思った。でもしなかった。それが私の人生だって、割り切って、噛み砕いて、飲み込んで、それが私のためなんだっていう父の言葉だけひたすら信じて、毎日を生きてきた。それでもなんとかやってこれた」
「それならなんでっ――」
「十六歳の誕生日にね、お見合いの話がきたの」
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