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「ふむ。牛肉か鶏肉か…………」
俺は今山吹商店の肉コーナーにて、牛肉と鶏肉のパックを見比べながらぶつぶつと呟いている。
分かっている。端から見れば変な人だということは。
しかし今日の夕食がカレーかチキンカレーか決まる瀬戸際なのだ。
気分的には普通のカレーだが、鶏肉の方が百円ほど安い。
普通の牛肉でも山吹商店ではずいぶん安いのだが、この財布の中身では百円でも安い方が嬉しい。
「よし、鶏肉にすっか」
散々悩んだ挙げ句結局俺は鶏肉にした。
夕飯はチキンカレーで決まりだな。
「後は玉ねぎ、にんじん、ジャガイモは家にあったから…………大丈夫か」
カレーだけでもって3日間。残り7日間をどうにかして過ごさなければならなかったが、考えるのがめんどくさかったので止めた。
入り口の女の子も気になったしな。
俺はちゃっちゃと会計を済まし、外に出る。
途端に初夏独特の暑さが体を包み込む。
はっきりいってクーラーの聞いていたスーパーに比べると全く持って不快だ。
「あの女の子は…………っと、もういないか」
さすがにもう帰ったらしく、ベンチには影も形もなかった。
変わりにおばさんが座っていたが、この短期間でさすがにあそこまでは老けるまい。
「いや別に変に親切感醸し出して、女の子と喋って変なフラグ立てたかった訳じゃないよ。まあなんて親切な方なの。お詫びに良かったらご飯でも…………なんて展開は期待してませんよ」
いや、本当に。
俺は知っている。平日の夕方時。
俺みたいな一人暮らしでもない限りスーパーにいることは稀だと。
しかもベンチに寝転ぶ美少女。
なんだこの展開?下手に首を突っ込んだら、厄介なことに巻き込まれる確率高すぎだろ。
例えばさっきの美少女がいきなり俺の前に現れたり――
「なんてあるわけないよな」
ただ、ちょっと可愛かったな。と思いながら、歩を進める。
と、そこでクイッと服の袖を引っ張られ、進行を強制的にストップさせられる。
一体なんなんだと後ろを振り向くと、
「あんた、私にご飯を奢ってやってもいいわよ」
件の美少女がそこにいた。
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