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――あんた、私にご飯を奢ってやってもいいわよ。
うん。聞き間違いだよね、絶対。私にってことは俺があの子にご飯を奢るってことだよな。さすがに初対面でそんな失礼かつ大胆かつ意味不明なこと言うやつ居ないよな、絶対。いや居ないって絶対――
「ちょっとなんとか言いなさいよ。あなたが私にご飯を奢りなさいって言ってるのよ」
聞き間違いではなさそうだ。
しかも命令形になっている。
有り得ない。二十一世紀にまだこんな傲慢なやつがいたとは。
「おーいそこの。聞こえてるの?あんたよあんた。その中途半端な身長と前髪の不細工でもないけどイケメンでもない日本人風味の顔のあんたよ」
美少女が俺の顔の前で手をひらひら左右に振る。
「聞こえてるよ。つうかなんだ日本人風味の顔って?俺はもとから日本人だっつうの」
俺の受け答えに、なぜかはっとした顔になる美少女。大丈夫かこいつ?
それから何故かがっつくような態度で俺に近づき、
「あんた、私にご飯を奢ってやってもいいわよ」
また言いやがった。
「奢ってやってもっていうことは、奢らなくてもいいんだな」
俺が至極まともな意見を言うと、
「却下するわ」
却下された。うん、意味が分からない。
「いい、よく聞きなさい。この私が、藤ノ宮桃香が、ご飯を奢ってもらってもいいって言ってるのよ。断る道理がないわ」
当然という表情で胸をそらしながらこちらに言う女。
何を言い出したがよく分からないが、この女がちょっと暑くなってきた時期に多発する、頭がちょっとあれな人だと言うことは分かった。
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