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「すまない頭がちょっとあれな人。俺には君の言ってることが難しすぎてよく分からん。と言うことで、俺はこの辺で、じゃ」
俺はもうめんどくさかったので会話を切り上げ、帰ろうとするが、また服を引っ張られ逃げることは出来なかった。
「オーケー分かった。話を聞こうじゃないか。お前の言い分はなんだ」
しょうがないので話を聞くことにする。俺って大人。
「お前じゃないわ、桃香よ」
「…………桃香、お前の言い分はなんだ?」
「気安く名前で呼ぶんじゃないわよ。気持ち悪い」
お、怒んないよ。お、大人だからね。
「藤ノ宮、もういいからさっさと話せ。そして離してくれ」
「まだ足りないわね。藤ノ宮様と呼びなさい」
よし、帰るか。ん?怒ってないよ。でも帰るわ。
俺が笑顔のまま後ろを向き駆け出そうとすると、
「待って待って!分かった、謝るから。ごめんなさい、と」
今度はさっきよりも必死に止めてきた。
さすがにもう呆れていると思ったのか、謝罪まで付けてきた。
まあ、究極の棒読みだったが。
「牛丼」
「…………は?」
「牛丼が食べたい」
わーお。こいつ、俺とあそこの因縁を知らないな。
「却下だ。近くの牛丼屋は今近づきたくないし、これを買っちまったからそんなお金もない」
見せつけるように鶏肉の入った袋を少しだけ上げる。
その瞬間桃香の目がキラリと光ったのを俺は見逃さなかった。
「つかぬことを聞きますが、今日のお夕飯は何ですか?」
ここまでわかりやすい奴に少し興味がわく。
「………………」
敢えて溜める。
桃香は鶏肉を使う料理を考えているのか目をキラキラさせてこちらを見つめてくる。
うっ…………可愛いんですけど。
「カレーライスだ」
「っ!?」
「チキンカレーだ」
「――っ!?!?」
面白いように表情が動く。見ていて楽しいなこいつ。
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