落ちてる物は拾わないように

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「プハァー。食った食った」 「ごちそうさま。涼弥にしては美味しかったじゃない」  俺の料理を一回しか食べてない桃香が何故分かるのだろうか?  結局俺がニ杯、桃香もニ杯食べて、炊飯器の中身は見事に空になった。  ちなみに食べ終わった食器類は全て綺麗に洗い水を切り、シンクにつけた金網に立てかけてある。  つまり俺は何も言わずに二人分の食器を洗い、ついでにテーブルを拭き、桃香に言われてお茶をついで、やっと一息つけたのだった。  その間に桃香はソファーに座りだらしなく食後の余韻を楽しんでいた。はぁ、俺って健気。 「さて…………聞かせてもらおうか」  俺はソファーにいる桃香に向かって本題に入る。 「えー、何を?」  桃香はまだだらけながらソファーにぐでっている。山吹商店のときもそうだったが、こいつにはもう少し恥じらいという物をもってほしい。……っと話題がすり替わるところだった。 「とぼけるな。あんな所にいた理由だ」 「なんか話したくないしー。それよりお風呂よお風呂。お風呂はどこかなー」  ソファから立ち上がり勝手に家を散策しようとする桃香の腕を、俺は掴む。  その時、桃香の腕があまりにも細いことに驚いた。 「話したくないなら別に話さなくてもいい。だがこれだけは覚えとけ。誰かに話すことで軽くなる傷がある。支えてくれるやつがいるってことは、案外頼もしいもんだぞ」  そして俺は桃香の腕を離す。話すか話さないかは桃香しだいだ。 「…………優しいね、涼弥は」  そう言って再びソファに座る桃香。  立っているのも疲れるので俺もソファに腰掛ける。  二人用のソファだが、二人の間は触れ合うか触れ合わないかぐらいの距離しかない。 「あのね――」  夜も静まったある日のこと。夏の嫌な暑さの中、桃香は話し始めた。
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