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内心では『おめでとう! かみきれ は ゆきち に しんかした!』なんてふざけ倒すぐらいの余裕はあったけど、「ありがとう!」と喜んでおく。当たりなのは分かってたし。
見事諭吉を獲得した僕の隣に、僕とペアルッキングな服を着た女子がぬっと前進してきた。お揃いだけど断じて彼女ではない、というか学校が同じだから制服も同じ造りというだけだ。
しかし見たことがない子なので、少なくとも同学年ではなさそうだ。下かな。
すると後輩さん(仮)は財布から紙切れを取り出した。紙切れ紙切れ何回連呼するんだ僕は。いい加減固有名詞を使うと、年末ジャンボだ。
「あの、これ当たってるので換金してください」とおばちゃんの吸い込み口に滑らせる。
「あ、はいじゃあ確認しますね」と言って当選番号一覧に目を通すおばちゃん。
「おめでとうございます、五等で一万円ですねー」と言っておばちゃんが本日二度目の(と決めつけて良いかは知らないが)諭吉を吐き出した。
「ありがとうございますー」と後藤さん(仮称)は笑った。
お互い目があった。
……なんていうか。
「「白々しい」」「な」「わね」科白を被せるなよ。
「「謂われのない批難」」「だ」「だわ」僕のアカデミー賞な縁起が白々しいだ
と。そして科白を被せるな。
「……お前、イカサマしてんだろ」一応後藤さんのような人に気を配って、おばちゃんには聞こえない程度の声で呟いた。
「まさか。宝くじでイカサマなんて出来る訳ないじゃない。しかも当たりくじを換金しただけよ?」白々しいと言わせてもらおう。
「当選番号一覧張り替えただろ。五等は正確には下三桁が五百十番だ」「五等だからってそんなベタな」「まあそれは冗談として、実際は」目に触れて一覧の下に敷かれている真の一覧を確認して「八百二十七番だろ、五等。でもお前は二百三十六を持ち込んで換金した」「あら、正解ね。記憶力いいの?」どこまでも腹立たしい女め。
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