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「え~? 次の特集は団鬼六(だんおにろく)先生にする予定だったんですよ? 伊丹十三(いたみじゅうぞう)先生だって、まだ『マルサの女』しかやってなかったのに……」
そこから先も、城島はこれから上映する予定だった映画を、洋画邦画新作旧作名作マイナー問わずに片っ端から挙げていく。
今の城島の話を聞けばわかるが、何も『上映会(レイトシヨー)』は、そうピンク色をした映像ばかり見るわけではない。映画サークル『陪審員8番の男』に所属する筋金入りの映画好き、城島庸平が選んだ珠玉の作品ばかりだ。
『ライムライト』や『羅生門』などといった白黒時代の名作から、今人気絶頂の映画。果ては普通活動弁士の語り口を聞きながら見るであろう映像だって守備範囲だ。
「まあ、仕方ないな。だけど、やらないって決めたわけじゃないから。新しいヤツが大丈夫そうな雰囲気だったら、再開しようぜ」
「そうですね。僕としては、それを第一に祈りますよ」
「それじゃ、またな」
「はい、おやすみなさい」
俺が電話を切ると同時に部屋のインターホンがなる。
新しく来た隣人かも知れない。ひょっとしたら、ここから恋なんかが芽生えるかも知れない。そんな淡い期待を抱いて、俺は玄関へ向かった。
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