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この光荘は、古いとはいえ、東京都のど真ん中という一等地に建ちながら、家賃は破格の月4万5千円。
それだから、新生活のシーズンには入室希望者がこぞってやってくるのだが、その大半を管理人の高田さんが門前払いしてしまう。御年70になる高田さんのお眼鏡に適う人物でなければ住まわせてもらえない。その為、2階建て全8室の半分も人が住んでいなかったのだ。
つまり、ここに引っ越しのトラックがある時点で、高田さんに入室を認められた猛者(加えて曲者)が1人増えたということである。興味が沸いた俺は、光荘の隣に建っている高田さんの自宅を訪ねてみた。
チャイムを鳴らすと、高田さんはすぐ玄関まで来てくれた。
「健児君、いきなりどうしたんだい? 先月の家賃はちゃんと払ってあるよ」
「そうじゃなくて。今、光荘の前に引っ越しのトラック止まってたでしょ。誰か越してくるの?」
言葉の理解ができなかったのか、しばらくボーっとしていた高田さんは、急に思い出したように手をポンと叩いた。
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