火星からの受信

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       シンエン どこまでも続く深淵の宇宙。 ゴッカン 極寒の深宇宙の中に浮かぶ箱舟。 アルタとなづけられたその船は、宇宙開拓史にその名を残すのが約束された宇宙船である。 赤土に染められた大地、第四惑星火星を目指すその船は、人類の存亡をになっていた。 その箱舟が今、月面都市ファレスフィアに降りたとうとしていた。 月面都市を中継点として燃料補給をすましたあと火星を目指すのである。 人類が初めて月面に降り立った時、アームストロング船長が残した言葉に有名なこの一説がある。 「一人の人間にとっては小さな一歩でも、人類にとっては大きな前進である」 人類の未来を予感させるこの言葉に当時、世界中の人が熱狂したが、残念ながらその言葉は現実の世界を如実(ニョジツ)には再現していなかった。 NASAがアメリカの国家機関である以上、そこには国家利益が優先されるのは必然だったのかもしれない。 アメリカはその後多くの観測結果を改ざんして発表し、宇宙の資源や利益の独り占めをはかったのだ。 この後NASAは軍需産業と結びつき、アメリカの裏の政府と言われるシークレットガバメントによって支配されることとなる。 早くから月に水が有ることも、ヘリウム3と呼ばれる未来の資源が月の砂(レゴリス)に大量に含まれることもNASAは掴んでいたが、永く一般に公表されることはなかった。 それどころか月には何の資源もなかったとして早々に探索を打ち切ったのである。 この後アメリカは、極秘裏に宇宙開拓の準備を進めていくことになる。 月面基地の構想は水面下で着々と進み、2030年月面基地建設の栄光はアメリカの独壇場となった。 人類が月に到着して60年あまり、ついにアメリカは月に帰ってきたのだ。 それは同時に、その肥沃な資源と利権をアメリカが独占することでもあった。 これには同盟国であるイギリスもかなりの部分でかかわっていた事は、公然の秘密となっている。 だがこの時よりNASAの数々の改ざんは明るみとなり、世界中が競って宇宙開拓に乗り出すことになった。 宇宙開拓時代の到来である。 そして2050年現在。         ヘンボウ 月面都市は大きな変貌を遂げていた。image=401804847.jpg
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