火星からの受信

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月面空港アルテミス第1層ロビー。 「只今より火星有人船アルタ20、3番ゲートにピットインします」 月面ロビーに鳴り響くアナウンスに多くの人の歓声がかぶさる。 普段はかんそに静まったロビーに多くの人々が集まっていた。 月面都市で生活する人々に、わざわざこの瞬間を地球より見に来た観光客まで様々だ。 人類の第2の故郷となる火星開拓に向かうこの船は、それだけ人類の期待がたくされている証拠でもある。 色々な人種でにぎわうロビーには、人民に紛れ多くのマスコミ報道陣も詰めかけていた。 その賑わいは初めて人類が月に到着した瞬間をうわまる勢いである。 その中に一際周囲の注目を集める少女がいた。 ミア・フレディアという名の彼女が、欧米とアジア系のハーフである事はその容姿からもあきらかだった。 だが彼女が注目を集める理由はそんな事ではない。 彼女が人類初のムーンチャイルドであるからである。 ムーンチャイルドとは、その定義から言うと月で誕生した子供となるが、今では低重量下で産まれた人を尊称してフレディアと呼ぶ事が多い。 これは月の子ミア・フレディアを愛称を込めてフレディアと呼んだ事に由来する。 基本的には低重量下で産まれた子供で、地球に戻った者はいない。 これは重力のほとんど無い環境で産まれた子供は、骨格や筋力が未発達で地球の重力、特に大気圏を突入する時の激しい重力に耐えられないためである。 これは月の申し子ミアも例に漏れず、今年で16になるが未だに地球に降りた事はない。 人類の希望と共に過酷な運命をも背負う事になった彼女。 その過酷な運命も後押ししてか、彼女は世界中で女神のように崇められていた。 それはあたかも月の女神アルテミスの降臨であるかのように。 こうして産まれたムーンチャイルドも、今では15人を数えるまでに増えていた。 だが依然、人類初のムーンチャイルド、ミア・フレディアの人気は健在であった。 当初低重力下で育った子供は大きく育つともくされていたが、現実の彼女は小柄である。 とはいえまだ被験者の数が少なく、彼女やムーンチャイルドが特別そうなのかどうかは定かでない。 ムーンチャイルドは特別に成長が遅いという説もあり、事実彼女は年齢に比べ幼く見えた。
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