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「……殺せ。貴様の薄汚い血を口にするくらいなら、死んだ方がマシだ」
屈辱に顔を歪めながら低く吐き捨てるシャルロッテだったが、無情にもマティアスは片手でその顎を強引に掴み、無理矢理指をその口内にねじ込んだ。
ついに涙を流しながら顔を左右に降るシャルロッテ。
あまりの光景に、見ていられなくなった初老の大臣は唇を噛みながら顔を背けた。
「神よ……」
――するとその時、高い天井のステンドグラスが派手な音を立てながら割れる――
同時に、鋭い刃が先端につけられた長い鎖が物凄い速さでマティアス目掛けて飛んできた。
マティアスはすぐさま足を引いてそれを避けると、凍てつくような紫の瞳を上方に向ける。
割れたガラスの破片が舞う中、その向こうには逆光ではっきりと姿は窺えないものの、女性のものらしき2つの影。
「うちの姫を傷モノにした罪は大きいわよ、氷の王子!」
「シャル!助けにきましたわ!」
(あいつら何て登場の仕方を)
驚きと呆れが入り交じるシャルロッテだったがしかし、その口角は無意識に上がっていた。
大聖堂にいた人々が悲鳴を上げながら逃げていくのとは反対に、武装した兵がシャルロッテ達を囲むようにぞろぞろと集まってくる。
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