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美しいというよりは可愛いらしいと形容した方がいいだろう。
外見はまだ少女のようにやや幼さを残した顔立ち。
しかし長い睫毛に縁取られた大きな黒瞳は、普通の女には見られない強さが宿っている。
手には剣が握られていたが既に何人か斬っているのだろう、鋭い切っ先からは赤い液体が滴り落ちていた。
それを見ると男は苦々しく眉間の皺を深める。
「シャルロッテ様自ら戦う必要などありません!ロジェ殿とセシリー様が北側の噴水庭で退路を確保しております!姫様も早く――」
しかしその言葉は最後まで続かなかった。
なぜなら次の瞬間、その男の心臓からは漆黒の刃が生えていたからだ。
「フランツ!」
シャルロッテと呼ばれた女は、床に崩れ落ちる男に駆け寄ろうとする。
が、その向こうにいた人物を見ると立ち止まった。
そしてその表情は見る見る憎悪へと変わっていく。
「父上や兄上を殺したのも貴様か……」
漆黒の剣を手にする人物に低い声で言うシャルロッテは、殺意の篭った視線を向けながら剣を構え完全に臨戦態勢に入る。
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