クリエイト

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 路地の暗闇の中。一真と裕菜の二人が寄り添いながら肩を組んで歩いてた。 「おぃ、大丈夫か」  一真は肩で支えてる裕菜に声をかける。 「大丈夫よ。これくらい」  しかし、足取りがふらふらしてて一真が支えてないとすぐにでも倒れそうだ。 「のみすぎなんだよ」  居酒屋で裕菜は焼酎の瓶丸々二つ空にしていた。 「なんか、いい気持ち」  まるで甘えてくるように一真にもたれかかる。 (酒飲ますとここまで性格変わるとは)  一真が知ってる裕菜ではあまり考えられない光景だ。 「一真背延びたね」  今更気付いたように言う。 「昔はこんなに小さかったのに」  彼女は腰ぐらいまで手を下げた。 「いつの時代だよ。最後にあった時の差は10cmだろ」  今は一真の方が大きい。僅か4cmだが。 (こいつの背は越したかったからな)  小学生からの一真の目標だった。 「なんか、今日は良いことづくしだ」 (人生で一番良い日かもしれない。何か後でぶり返しがきそうだけど)  一真にとって幸運は不幸の予兆だ。裕菜とつきあった時だって、模擬試験の結果だって結局はより不幸をかみしめる為の前座でしかなかった。 「キヒッ、キヒヒヒヒ」  そんな奇妙な笑い声が夜道に響きわたる。(な、なんだ?)  一真は声がした方向へ目をやった。  一真と同じ年くらいの男が一人ふらふら歩いている。 (こいつ変だ)  目が虚ろで焦点があっておらずに。足取りがふらふらしてる。まるで末期の薬物中毒者だ。  しかし、もっと根本的な部分からそいつはおかしかった。 「一真、私よってどうかしたのかな?」  裕菜の声が震えている。 「なんであの人右手燃えてるの?」  男の右腕が真っ赤に激しく燃えていた。さらに異常なのは男は熱さを感じないように笑ってるのと。服が燃えていない事だ。 「見つけた」  男が一真を指差してて言う。 「キヒャ、見つけたぞ。滋賀一真」  男はそう叫んだ。 (逃げろ)  一真の身体中の本能が叫んだ。この男に関わらない方が良いと。  一真は裕菜を有無を言わさず強引に抱えて走り出す。抱えたままではきついかもしれないが。それでも薬物でいかれてるような奴なら逃げ切れる可能性はあった。  だが、突然真横を真っ赤な炎が通る。少し遅れて灼熱のような風が一真は感じた。 (なんだ今のは?)  映画でみるような火炎放射機とは比べものにならない。真っ直ぐに純粋にとんでいく炎。 「ありえない・・・今手から炎が」
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