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裕菜は男の掌から炎が吹き出るのを完全に目撃していた。
一真は振り返った。腕で燃えていた炎が、掌で燃えていた。
「嘘だろ」
漫画やアニメならよくある。炎を出すなんてメジャーだ。だが、現実では有り得ない。
「キャヒャ。逃げるなよ」
逃げたら次は当てる。そんな警告のように一真は感じた。
一真は抱えている裕菜を少し見る。もはや、恐怖で歯をガチガチならしながら震えてる。もはや、言葉を発する事すら難しい。
(落ち着け)
一真は冷静になろうと努める。パニックになったままではろくな事がおきない事はよくしっていた。
(二人で逃げ切るなんて不可能だ)
一真は物陰に降ろす。
「か・・ず・ま?」
裕菜は震える声でやっとの思いでだした。手をのばして止めようとしたが体が動かない。
(大博打だな)
一真は賭けで勝った事なんて今まで一度もない。
(今回は絶対に負ける訳にはいかない)
一真はどんなに、分が悪くても今度ばかりは負ける訳にはいかなかった。拳を強く握る。
「キヒャ。そうだ。それでいい。キヒャヒャャ。さぁ、物語の開幕だ。」
男は炎を消して拳を固める。
(チャンスだ)
炎を使う気が無いなら、成功する可能性もあがる。
一真は男にむかって走りだした。男は迎え討つように拳をふりあげた。
「ぐっ」
見事に一真の顔面にめり込んだ。
だが、一真は怯まない。だてに今まで酷いめをみてきてない。打たれ強さだけなら人一倍だ。
一真はカウンターで強く握った拳で男の顔面を殴ろうとした。
男は防ごうと顔面に防御を固める。だが、いつまでたっても衝撃がこない。
一真の拳は男に当たる事なく。変わりにもう一歩足を踏み出していた。
「なっ」
男が気付いた時にはもう遅かった。完全に予想外だった。
一真はそのまま駆け抜けて逃走した。
「キヒャ。そんなの。キヒャ。許される訳ないだろう」
男は一真を追おうとする。
(これでいい)
一真は振り返って、一つ目の賭けに成功した事を喜んだ。
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