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「ん!」
少々怒りながらも、女性は青年に白い手を差し伸べる。
「あ、すんません」
青年はその行動を、一先ず立ち上がるのを促す為と判断してしまい、鼻血だらけの裾を差し出したが………………。
「違うわよ!お金払いなさい!」
「え…………?俺払いましたよ?皿の上に出したじゃないですか。つい三ページ前に」
「アンタなに言ってんの?ぺーじ?そもそも皿の上になんか、何もないじゃない」
そう答えられた青年は、ますますこの状況が理解できなくなってしまった。
そんな折、青年は先程食事を済ませた少し離れた場所で、二人の年端もいかない子供が、ニヤニヤしながら笑っているのが不意に見えた。
そして背が高い方の子供の手には、青年が払った筈の硬貨数枚が、キラキラと陽光を浴びて輝いていた。
この瞬間、青年は悟る。
「「ば~~~~~~か!!」」
声変わりをしていない、高い調子で叫び声をあげると、二人の子供たちは青年とは反対方向に全速力で走り始めた。
すかさず、青年も走り出す。
「ッ!?こら待ちやが━━━━」
走り出したが、
「話はまだ終わってない!」
「あだだだだだだだだだだ!!千切れる!千切れる!」
即座にそれへ反応した女性に左耳を掴まれ、青年は身動きがとれなくなってしまった。
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