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先程より日は少しだけ傾き、暑さは早くも一日の最高潮を迎えつつあった。
商店街を構築する一つである、とある料理店の厨房内で、
「いやホンットね。申し訳ないと思っています。あの時は…………調子乗ってたというか、なんというか…………。とにかくごめんなさい。悪気はなかったんです、本当に」
食器や調理器具が暮らしている空間で、青年は謝罪の言葉を述べていた。何度も何度も、ただひたすらに。………………土下座の状態で。
所々が青く腫れ上がっている青年の顔を眺め、女性は「少しやりすぎたわね…………」と声を漏らし、若干の罪悪感を感じていた。
(いやいや…………こんな食い逃げ男なんか気にすることなんかない!!そう…………よ!絶対そう!!)
自らの負い目を悟られないようにして、凛とした雰囲気を保ちつつ、女性は青年の事情を知るために質問をした。
「あなた…………ここじゃ見ない顔ね」
「そりゃあ、あんだけ顔面を強打されまくったら誰の顔かなんて分からな………………ってウソウソウソウソ!はいそうです!この地域の人間じゃありません!だからそのフライパンを降ろしてください!…………違う!!振り下ろすんじゃなくて!!!」
懇願された女性は渋々、青年の頭上に照準を合わせたフライパンをゆっくりと降ろし、語勢を強くして、質問に戻った。
「ふぅん。じゃあ、名前は?」
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