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稍(やや)あってから、女性は短く嘆息し、レンのコートを乱暴に掴み、ズルズルとそのまま厨房から店内、店外へと引っ張っていく。
親に首根っこをもってもらう子猫のように、コートの襟を掴まれながら、地面を引きずられるレン。
最初はなすがままにされていたが、行き先も判らず、流石に不安になったので、恐る恐る女性に質問を投げかけた。
「あの~。どこ行くんですか?」
「守護の所よ」
「しゅご?何で街の自警団の所へ?」
「あなたを引き渡す為よ」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!待って!待ってください!」
「大丈夫よ。ここから近いから」
「だっ、大丈夫じゃないじゃないですか!何でもしますから勘弁してください!!」
「本当に何でもしてくれるの?」
「はい!喜んで!!」
「なら、大人しく引き渡されてちょうだい」
「だからそういうことじゃなくてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「『何でも』聞いてくれるんでしょう?」
(だっ、駄目だこの人。俺の話聞いてくれねぇ)
このままでは牢屋行きは必至だと判断したレンは、抵抗しつつ、この状況を打破する方法を必死に考え続けた。
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