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夜を魅せていた月は朧気に空へ宙ぶらりんになり、代わりに朝日が主役へと現れる。
新たなる一日のスタート。
朝である。
陽は未だに少ししか顔を出しておらず、まだ眠っている住人も多い。
その中でも、商店街ではこれから始まる仕事のために、下拵えをしたり、掃除をしたりと、せわしなさそうに皆が動き回っていた。
………………その一角にて。
「らぁっしゃいませ~!!らぁっしゃいませ~!!安いよ安いよ~!!…………………………ってな感じですかね?」
「レン。あんた私のこと嘗めてるの?」
「滅相もありませんよ?」
「なら…………なんでそんな掛け声やってんの!?ここは朝市じゃないの!!真面目にやらないと今度こそ突き出すわよ!!」
「あはははは…………勘弁してもらいたいです」
とある店先に、一組の男女がいた。
柔らかい表情で苦笑いをしている男は、昨日料理屋の女性に連行されそうになったレンである。
食い逃げと呼ばれたそのレンが、なぜこの様なことをしているのかというと………………。
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