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~一日前~
襟を引っ張られていくレンの頭に浮かび上がった妙案とは…………。
「働かせてください!」
しっかりと金額分を得るため、仕事をもらう。レンはこの地に少しばかり滞在しなくてはならない『用事』があったので、一石二鳥だと彼は考えた。
が、
「いやよ」
「即答!?」
ものの数秒もしないうちに、拒否されてしまったのだ。
「そ、そんな殺生な!」
「何度でも言いなさい。私は聞かな━━━━━━」
「鬼!悪魔!鬼畜!外道!非道!おたんこなす!意地っ張━━━━━━」
「それ以上言ってみなさい?」
「すいませんごめんなさい!…………でもッ!」
そこで一旦言葉を区切り、今までの雰囲気とは異なった、至極真面目な空気を醸し出すレン。
苦虫を噛み潰すような表情になったのが視界に入り、女性は足を止めて、向き合ってレンの顔を正面で捉えながら聞き入った。
「でも?」
「俺には…………俺にはやらなくちゃいけないことがあるんです。だから、御願いします」
そんな彼の瞳は、真剣そのものであった。
「………………」
それを見た女性は、黙り込んでレンの真っ直ぐな眼を凝視する。
その数秒後。
女性は腰に両手を当て、観念したかのように、大きな溜め息をつく。
「はぁ~。負けた」
「へ?」
「だから、雇ってあげるって言ってんの」
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