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青年は、自らを止め処なく照らし続ける陽光に、瞳を凝らす。
(この街にきっと、奴がいる)
そしてまた、歩き始める。
道にでて歩を進める度、少しずつ少しずつ、土煙が青年の足元に纏わりつく。
それはまるで、ねっとりと青年に絡み付いて離さない、彼の罪過を体現しているかのように。
「…………」
なんとなく溜め息をついてしまいそうになった青年だが、すんでのところでそれを止め、音がでるくらい勢い良く頭を横に振る。
「イカンイカン。暗いことなんか考えてたって意味ない意味ない」
青年は呟いて、いつもとは違い、無理に笑い顔を作ろうとした。
が。
「こぉぉぉぉらぁぁぁぁ!!」
「………………」
「まちなさぁぁぁぁぁぁい!!そこの腕がプラプラしてる奴!」
「…………あり?俺?」
青年は、背後から発せられた女性の声に立ち止まった。初めは自分ではないと青年は考えていたが、自身の特徴である、黒いコートのことを言われたので、対象は自分であると判断した。しかもその声、その足音は、徐々に大きくなっていく。
青年は、この街に来てからの出来事を頭に思い浮かべた。思い浮かべてはみたものの、誰かに怒鳴られるような事には覚えがない。
「待ちなさいってぇ……言ってんのよこの食い逃げぇ!!」
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