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もう二発、あと一発。
男の手に力がこもる。
そして衝撃がゲートに達しようとしたその時、静寂が訪れた。
何が起こったかは分からない。ただ耳の奥に残るじんじんとした痺れと、いまや形を変えてしまった隔壁だけが先ほどからの衝撃が虚構でなかった事を証明していた。
どのくらいの時間が過ぎただろうか?
男は大きなため息をつきながらようやく銃口を下ろした。
「・・・・・・なんだってんだ。一体・・・・・・」
一人ごちたその時、オレンジのゲートが音も無く開き、中から見慣れた『あの男』が現れた。
レッド公だ。
男は声も出せずにいた。
とうに死んでいたと思ったレッド公が生きていたからだ。
爛々と輝く目を除き、その全身は真っ赤に染まっていた。
「ド、ドクター。ご無事でしたか・・・・・・」
男はやっとの思いでそれだけ口にすると、あだ名通りの姿になったレッド公を呆然と見つめた。
「君、任務ご苦労だった。トラブルは解決した。これを片付けておいてくれ。わたしはすぐに研究に戻らなければならないのでな」
そう言ってレッド公は無造作にボールのようなものを投げて寄越した。
両手で受け止めた男は思わず悲鳴を上げた。
ボールだと思ったのはケネス大尉の首だったからだ。
その目は恐怖で見開かれており、死の間際、想像を絶する体験をした事を物語っていた。
首から垂れ下がった脊髄から、未だ止まらない血が滴り落ち、切断面は何か凄まじい力で引きちぎられたかのように捩れていた。
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