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その言葉に答えるように幼い少女の声が聞こえてくる。
「あーーーん!またやってしまったのよさー!」
すぐに焦げ臭い匂いが漂ってくる。ブラック・ジャックは大股に歩くと床を踏み鳴らしてキッチンへと向かった。
キッチンでは小さな女の子がもうもうと黒煙を立てる鍋と格闘していた。
おかっぱ頭に大きな瞳、髪の後ろではどうやっているかは分からないが四つのリボンが結んである。
年の頃は五、六歳といったところだろうか。そんな少女が椅子を踏み台にして大きな鍋を手に泣きべそをかいていたのだ。
手にした鍋の中身は既に黒炭と化しており、最早何を作っていたのかすら判別出来なかった。
ブラック・ジャックは呆れるように顔に手を当てて言った。
「ピノコ・・・・・・お前はどうして毎回毎回そう料理を焦がすんだ?何か私に恨みでもあるのか?それに・・・・・・一体何を作ろうとしていたんだ?その消し炭は・・・・・・」
するとピノコと呼ばれた少女は頬をぷくっと膨らませて言った。
「消し炭やないのよさ。ちぇんちぇー最近元気ないかや、がんばってハンバーグ作ってあげようとちたのよさ」
そう言ってピノコは鍋の中身をブラック・ジャックに近づけた。
「馬鹿っ!ハンバーグは普通フライパンで作るものだろう!何故鍋なんかで作ったんだ!?」
「だって・・・・・・煮込みハンバーグってテレビでやってたかや・・・・・・」
「そんな手の込んだ物をお前が作れるわけ無いだろう?まだ子供なんだぞ」
子供、という単語にピノコの表情が曇る。
「ピノコこどもやないのよさ!十八ちゃいのれれぃなのよさ!いーだ!」
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