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「またそれか。まったく何かあるとすぐそれだ。もう少し女の子らしく・・・・・・」
その言葉にかぶせるようにピノコが毒づく。
「ふーんだ!ちぇんちぇーお医者っていっても『もぐり』じゃない」
「ム・・・・・・!?」
図星を突かれたブラック・ジャックは思わず言葉に詰まった。そこに更に畳み掛けるような口撃が襲い掛かる。
「そえに『ぼったくり』で」
「く・・・・・・」
たじろぐブラック・ジャックに容赦ないピノコの言葉が続く。
「『しゅせんど』だって」
「ど・・・・・・どこでそんな言葉覚えてきたんだ!?全く・・・・・・」
そう言うとブラック・ジャックはピノコの手から鍋を引ったくりシンクで洗い始めた。
「あー!ピノコのあいのけっちょう(結晶)が!」
見る見る内にピノコの両目に涙が溜まる。
「ちぇんちぇーのばかぁーー!」
そう叫ぶとピノコは自分の部屋へと駆け出してしまった。
なんとも言えない複雑な表情をして、ブラック・ジャックは肩を落として鍋を洗いながら独り言を呟いた。
「やれやれ・・・・・・。結局今日も私が飯の仕度か・・・・・・」
* * *
ぐらぐらと沸き立つ湯面が調理の終了を知らせる。
結局レトルトカレーを作る事にしたブラック・ジャックは炊飯器からよそった米にカレーを掛けながらピノコのいる部屋へ向かって叫んだ。
「ピノコ、食事が出来たぞ!早く降りて来るんだ」
部屋の向こうから蚊の鳴くような答えが返ってくる。
「食べたくないのよさ・・・・・・」
ブラック・ジャックは小さなため息をつくとカレーを口に運んで一人で呟いた。
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