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光点がレッド中央部へと進んだその時、異変は起こった。
今まで規則正しいフォーメーションを組んでいた光点達が、乱雑な動きをし始めたのだ。
まるで何かから逃げ惑うようにめちゃくちゃな軌道を描き、這い回っている。
「ど、どうしたんでしょうか・・・・・・?」
青年が声を震わせながら言った。
「さあな。何かの異常があった事だけは・・・・・・」
光点は散り散りに動き、その中のいくつかはかろうじて隊列を組もうとしているように見えたが、すぐにそれもかき消された。
男はその動きを見て愕然とした。
思わずその答えを口にしてしまう。
「逃げてるんだ・・・・・・」
「・・・・・・え?」
聞き返した青年は青い顔をしていた。
「逃げてるんだよ。連中。何かから・・・・・・」
「何かって・・・・・・あっ!」
青年が言い終らないうちに光点が一つ、画面から消えた。
それが兵士達の死を意味している事は言わなくても分かっていた。
「あ・・・・・・また!」
光点は何かに侵食されるように次々に消えていく。
ここでは知ることの出来ない、とんでもない『何か』によって兵士達が次々と殺されているのだ。
その中で一際大きい光点が凄まじいスピードで動き回っている。隊長であるケネス大尉のものだ。
ケネスを示す光点はレッドから離れ、オレンジの外周部まで後退していた。
不意に足元から湧き上がるような衝撃が二人を襲った。
視界の隅に監視用の三十六面モニターが移りこむ。
男は確かに見た。
そこに映し出されたオレンジの外隔壁が奇妙な形にひしゃげているのを。
それはまるで中にいる何かが、殻を破って外に出ようとしているようだった。
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