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どれだけ時間が経ったのか
曲が終わり、フードの男は静かに身を引き、イリスに恭しく頭を下げた
彼女は一息付いて辺りを見回すど、会場にいた人々がみんな自分達を見ていた
さっきまでは一身に踊っていたのに……私が普通に踊っているものだから、皆不思議に思ったのかもしれない
人と距離を置きながら接するのが普通になっていたイリスにとって、注目されるというのは不可解な現象でしかなかった
フードの男が顔を上げると同時
会場が拍手で包まれた
人々の笑顔、称賛、感動…その全てが2人に注がれていた
情況は飲み込めず、半ば放心していたイリスであったが、胸の中に温かい衝動のようなものが込み上げてきた
そして、自分が笑っていることに気付いた
今まで沢山のものを避けてきた
いや、自分はそこには相応しくないと思っていた
しかし、人と繋がることは…こうして誰かの心に居られるということがこんなにも嬉しいことだったのだと……生まれて初めて知ったような気がしていた
沢山の人が集まってきて話し掛けて来てくれた
そうしている内に、さっきの男性の影が無くなっていた
イリスが辺りを見回すと、人の波に逆らう一つの影が目に付いた
「すみません、ちょっと急用が……」
イリスはそれだけ言い残し、その影を追い掛けた
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