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さらに一年が過ぎた。僕は本来なら中学に進学する年齢になっている。
テレビをつけると、去年から引き続き、例の番組で両親が訴えかけていた。
そのあとで、僕の紹介。成績優秀。周囲からは神童とまで呼ばれていた山岸拓真くんの謎の失踪から四年。いまだに拓真くんの行方に関する手かがりは一切ありません。視聴者の皆様からの情報をお待ちしています――。
最後の目撃者として、姉さんの証言が切なげなBGMとともに流れる。
『私が高校から帰宅すると、弟は友達と遊びにいくといって、家を出たんです。あのとき止めていれば……、こんなことには、ならなかったのに……』
父さんの胸に泣きつく姉さん。それを恋人みたいに抱きしめる父さん。その傍ら、ハンカチに顔を埋める母さん。
そこで、映像が消える。
「もういいでしょう? 忘れて、私との生活を楽しみましょうよ」
マユミさんはこの一年でだいぶやつれてしまった。頬がこけ、髪の毛にもわずかだが白が浸食しはじめている。
マユミさんが僕の両親が出演している番組を消すのは、僕に見せたくないというより、自分が見たくないからだ。
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